2023.03.14

“昔ながらの藍染め” ずっと、これからも

IndigoBlue4U 代表 / 德永真紀子さん

伝統的工芸品デザイン製造 原材料確保認知度向上販路拡大

 

『ジャパンブルー』と海外で呼称されている藍染めの青い色。徳島県は藍染めの元となる染料“蒅”(すくも)作りの本場として平安時代より伝統が引き継がれ、その品質の高さから江戸時代には「本藍」と呼ばれ、別格扱いされていました。
そんな阿波藍を使って伝統的な藍染め体験を行うのが、鳴門市瀬戸町にある工房「IndigoBlue4U」です。

代表の德永真紀子さん(58)はもともと英語の講師。 結婚以降はご主人の転勤でアメリカ・ドイツ・ブラジルを渡り歩きました。 帰国後は福島県・神奈川県で生活し、故郷の鳴門市に帰郷。順風満帆な海外生活を送ってきたかのように見える德永さんには心残りがあったといいます。

「海外で日本のことを聞かれたんです。 頭を悩ませましたが出てこなくて…。 何も紹介できませんでした。 改めて日本の誇れることとは?と考えた時に、母がやっていた藍染にたどり着いたんです」。

 

国内に生活の拠点を移してからは、様々な藍染工房を訪問した德永さん。しかし、化学染料を使っていたり、素手で染料を触れなかったりと自身が知る伝統的な藍染め手法ではありませんでした。
そんな中、神奈川県に住んでいる時に天然の藍を使った昔ながらの藍染めを行っている染め師が月に一度ワークショップを開催していることを知りました。そこは藍の種から栽培、そこから蒅を作り、染めるまでの一連の過程を全て体験できる德永さんにとっては夢のような場所でした。そのワークショップに一年通いつめ、改めて伝統的な手法で染める藍染の魅力に取りつかれたといいます。

「2019 年から3 年間、藍住町の地域おこし協力隊として藍染め漬けの日々を送り、2022 年に独立しました。独立してからはSNS に海外の方からコメントを多くいただけるようになりました。
私自身が海外在住経験があることや交流活動として行っていることもありますが、海外、特にアメリカでは国ができた歴史も踏まえると伝統が少ないが故にリスペクトを持っているので興味があるのだと思いますね。そういった声や背景に触れると苦労も多いですが、伝統を守り紡いでいく。そういう使命感のようなものは一層湧き上がりました」。

 

 

德永さんのこだわりは、 本藍を使った『天然灰汁発酵建』という昔ながらの藍染め方法。
工房中央には大谷焼きの藍甕(あいがめ=染料を溜めておく甕)が2つ置かれており、材料には灰汁・石灰・蒅のほかに発酵を促すための日本酒やフスマを使用しており、余分なものを一切使っていないオーガニックな素材で構成されています。とくに日本酒は文化元年(1804)創業の地元老舗酒造所である本家松浦酒造場のものを使うこだわりぶり。

「私は素手で染めています。染料の蒅は生き物ですので、人と同じように毎日調子が違います。
染料のぬめりや肌触り、時には舌からの感覚で染料の状態を確認しています」。

 

 

德永さんは毎日、試験布で簡単な染めを行い藍の状態を記録しています。藍の染め液の寿命は約3ヶ月だそうで、藍を建ててすぐの蒅は染まりが良く、色も鮮やか。そこから月日の経過や日々の気温などによって徐々に染まりづらくなっていくんだとか。

「建てたばかりの藍は鮮やかですが、色落ちしやすくもあります。一方、年月を経ると鮮やかさはひと段落して若干染まりづらいですが、その分色落ちしにくくなります。
染料の状態に合わせて染め上げられるように良いところを活かす染めを心掛けています。
藍には48 色あると言われており、その中でも私は昔侍が愛したとされる褐色(かちいろ=勝ち色)が好きでそこを目指しています」。

 

 

IndigoBlue4U では、一般の方でも傘や手ぬぐいなどを藍染めするワークショップが体験できます。
国内の観光客はもちろん海外からも観光客が訪れるのはこの工房ならでは。せっかく日本に足を運んで藍染という文化を体験しに来てくれている海外の方にただ染めてもらうだけでなく、原料の蒅がどのようなものか、藍染の歴史についてなど体験だけでなく藍染の様々なことを知ってもらえるような工夫をしているようです。

「 最近はオンラインで“絞り”(生地の一部を針と糸で縫ったり、 つまんだりして染料が染み込む部分と染み込まない部分を作ることで模様を作る技法)のレッスンをイタリアの方にしたり、ハワイ出身の方には実際に我が家に泊まってもらいながら藍染体験をゆっくりと楽しんでもらいました」。

 

 

2023 年の夏を目処には藍染体験だけでなく、拠点である瀬戸町の漁師町の風情を楽しんでもらうため、民泊の開設を準備しているとのこと。日本古来の伝統が息づく国際交流拠点としての未来を胸に、昔ながらの手法を守りながら日々工房の立ち続ける姿がそこにはありました。

 

課題

・蒅の原料である藍の確保
・SNS を通じた誘客やPR

企業情報

企業名 IndigoBlue4U
業種 染色、工芸
事業内容 藍染め体験、ワークショップ
住所 鳴門市瀬戸町堂浦地廻り壱229-3
代表者名 德永真紀子
設立 2022 年
Facebook https://www.facebook.com/indigoblue4u
Instagram https://www.instagram.com/indigoblue4u/
電話番号 080-4433-3228
E-mail osborne2727delamo@gmail.com