2024.01.22

商品に幸福・心に贈り物を サンドブラストの匠が吹き付ける 新しい幸せのカタチ

福刻堂plus 代表/新竹敏美さん

製造 体験教室に向けた準備人材の不足

 

圧縮された空気に砂(研磨剤)を混ぜ込み、吹き付けることで素材の表面を削るサンドブラスト加工。バリ取りや錆落としに使われる一方で、凹凸の彫りを自由に操り装飾を施したりできることから工芸品にも採用されています。

2017年5月、鳴門市大麻町の自宅に隣接する形で『福刻堂plus』をオープンした新竹敏美さん(54)。ギャラリー兼工房である店内に一歩入ると、グラスやタンブラーといったこれまで手掛けてきた数多の作品が目に飛び込んできます。

「福刻堂という店名には「商品に幸福を刻み、心に贈り物を刻みたい」との想いから名づけました。サンドブラスト加工は繊細な作業なので気力・体力を消耗しますが、完成品を手にしたお客さまの笑顔を見ると嬉しくなって私の方が幸福をお裾分けしてもらうこともしばしば。この瞬間は仕事に携わって20年以上の今でも格別です」。

加工できる素材は金属・ガラス・木材・デニムと幅広く、模様などを付けることが一般的なサンドブラスト加工において福刻堂plusでは写真彫りができるのが強み。写真彫りは新聞写真のように黒いドット(点)と白背景で構成され、白と黒の二色で陰影をつけながら被写体を忠実に表現していく職人の成せる技です。

「お客さまからお預かりした写真素材を編集ソフトで補正し印刷・転写したシートを素材に貼付して彫り始めますが、素材が小さいほど技術が求められます。間違えて背景となるところを彫ってしまうと、完成した時にホクロのような跡として残ってしまいます。ここ数年は老眼との勝負です(笑)。写真を彫るだけならレーザーでも可能ですが、平面にしか彫れません。その点、サンドブラストはゴム素材以外でしたら曲面にも彫れますし、噴射する圧力を変えられるので、より立体感のある質感に仕上げられます」。

たった二色しかないモノクロの世界。彫る深さや当て方、砂の塗布量を巧みに操り、まるで写真をモノクロにしたような立体的な仕上がりが話題を呼び、「結婚・出産」といった人生の節目はもちろん、最近は家族の一員であるペットの写真を使ったオリジナル作品を作りたいとの声が多数上がっています。その随所に光る熟練された技術は決して機械にはマネできるものではなく、依頼は海を超えて海外から届くこともあるんだとか。

「今でこそたくさんのご依頼をいただいていますが、始めた当初を考えたら自分を褒めてあげたいくらい(笑)。もともと父の介護をしながら自宅でもできる仕事を探していて、偶然見つけたのがサンドブラストでした。生来、縫い物や編み物が好きだったこともあり「これだ!」と。決断した翌日には専用機械を販売している大阪へ向かい、目が飛び出そうになる金額でしたが即決。完全独学で技術の習得に勤しむ日々を送りました。ところが、飛ぶ鳥を落とす勢いだったサンドブラスト加工を用いた工芸品のブームは一気に収束。同業者も多く飽和状態の中、降ってきたアイデアが「写真加工」でした。誰もやっている人がいなかったので完全独学…そりゃあ苦労しましたよ(笑)。でもお客さまの喜ぶ顔を見たらあの時苦労してよかったなってしみじみ思いますね」。

現在はLED とサンドブラストを組み合わせた新商品を展開中。彫った箇所が屈折することで独特な表現を創り出すラグジュアリーな商品です。

「弊社の作品を家の建具やアクセントガラスとして取り入れられないかと構想を温めています。LED の優しい光で今流行りの和モダンな雰囲気を演出する一助となる、そんな作品を製作できないかなぁと。実は私の息子が建築士なのですが、息子の建てる家と弊社の作品のコラボレーションをするのが夢なんです。洋風なデザインの家が増えている昨今、日本の古典的な建具や「和」の文化は守りつつ、自然と和室に溶け込む作品に挑戦したいですね」。

 

課題

・後を継ぐ人材の不足
・体験教室に向けた準備等

企業情報

企業名 福刻堂plus
業種 製造業
事業内容 サンドブラスト工法を用いて文字・デザイン加工を施した記念品などを製作、販売
住所 大麻町桧字西谷山9-66
代表者名 新竹敏美
設立 2012年
Instagram https://www.instagram.com/ fukkokudou_plus/?hl=ja
電話番号 088-689-3513
E-mail 09068858815@docomo.ne.jp