2025.05.07

揺るがぬ“手作業へのこだわり”6次産業化も見据える老舗食品加工メーカー

株式会社鳴門のいも屋 仕入部 / 仲野 仁一朗さん

食料品製造 お客様の声を拾う手段人材の不足原材料確保

 

徳島県を語る上で欠かせない名産品の一つがなると金時。その生産量は全国トップ5に名を連ねます。日当たり・水はけの良い砂地畑が栽培に適しており、鮮やかな赤紅色の外皮は薄く、優しい甘さと繊維質に富んでいることが特徴です。贈答品としてはもちろん、食用以外にも芋焼酎ならぬ焼き芋焼酎などの加工品としても人気を集めています。

「こんな偉そうにインタビューを受けていますが、2024年の夏に入社したばかりで…(笑)。偶然にも弊社はちょうど創業30年。不思議な縁を感じます」と感慨に耽る仲野仁一朗さん(24)。仲野さんは大学卒業後に県外の銀行へ就職。およそ1年半、経験を積んだ後、2024年の夏に帰郷。同社へ入社しました。

「幼少期から慣れ親しんだこの工場。将来は継ぐのかなとボンヤリ感じていました。就職で県外に出たのは、一度、製造業ではない他業種を経験することで、いざココで働くことになった際のアドバンテージになると思ったからです」。

入社後は、同社の生命線ともいえるなると金時の仕入れを担当。2t車で鳴門・川内・松茂の芋農家さんを訪ね、多い時には10tものなると金時を工場へ持ち帰ってきます。

「正直、めちゃくちゃ大変です。車からの積卸しなんて最初は、あと何日体が持つだろう…と案じたことか(笑)。弊社は特定の契約農家さんがいません。そのため、いかに多くの農家さんのもとへ赴き、信頼関係を築けるかが社運を握るといっても過言ではありません。そういった意味では銀行員時代に培ったコミュニケーション力が活かされているなと実感します」。

若干24歳とは思えない終始落ち着いた受け答えにスタッフ一同驚きつつ、「それじゃあ、行きましょう」と車を走らせたのは同社になると金時を卸してくれている一軒の農家さん。到着すると、すぐさま農家さんのもとへ。雑談を交えつつ、その日仕入れるなると金時の状態や生育状況など、詳細に情報を聞き出していきます。

「現在、あらゆる資材の高騰や後継者不足などから廃農される方が多く、中長期的に見た原材料の確保が最大の課題です。この課題を解決する一策としてなると金時の自社栽培を行っています。たわいもない世間話から、卸していただいている芋のこと・生産者さんの生の声を聞くことで、少しでも自社栽培のヒントになることがないかなと」。

黄金色のタレでコーティングされ、黒胡麻の風味がアクセント。電子レンジでチンしてやれば、いつでも出来立ての味を食べることができる「芋棒」は同社を代表する唯一無二の看板商品です。従来の乱切りでダイヤモンドカットではなくスティック状。その革新的な見た目もあり、スーパーなどの小売店はもちろん、誰もがお世話になっているであろう大手回転寿司チェーンのデザートとしても親しまれています。

「一部機械に頼る工程もありますが、ほとんどの作業を手作業で行っているのが弊社の特徴です。どんどん設備を投入して大量生産!…なんてこともできるんですけど、やっぱり手作業にこだわりたい。それに人の手で作られた芋棒の方が何倍も美味しいんですよ」。

決して機械には出せない、人の手が加わることで味わいが変わると話す仲野さん。そのこだわりは手作業だけではないとのこと。

「口に入る瞬間に出来立ての状態を提供できる芋棒にするため、常に改善できるところはないか従業員一同、考えながら仕事をしています。この探究心も弊社の譲れないこだわりであり、強みでもあります。いかに消費者目線にまで落とし込んだ商品作りができるかが弊社が生き残る命綱。これからもより良い商品作りに心血を注ぎつつ、将来は原材料の生産から加工・販売まで一手に担える6次産業化なども見据えています。そのためにも芋農家さんと足並みを揃えて邁進していきたいと思います」。

課題

・原材料の安定供給
・人材不足
・お客様の声を吸い上げるシステムの構築

企業情報

企業名 株式会社鳴門のいも屋
業種 製造
事業内容 なると金時の加工・販売
住所 瀬戸町明神字板屋島123-5
代表者名 仲野 智也
設立 1994年12月
HP https://www.imoya.jp
電話番号 088-688-0950
E-mail info@imoya.jp