2025.05.07

超音波でミスト状に。 酒蔵生まれの液体分離システム

ナノミストテクノロジーズ株式会社 代表取締役社長 / 松浦 一雄さん

製造 人材の不足

 

「NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が公募していた「バイオエタノールを安価で効率良く作ることのできる技術開発」に県外企業と共同で応募するにあたって、ならば新しく会社を立ち上げてそこから応募しようと平成14年に弊社の前身を立ち上げました。もう20年以上も経ちますか」。

 

今年で創業23年。『ナノミストテクノロジーズ株式会社』代表取締役社長 松浦一雄さんは当時を振り返り目を細めます。

 

 

同社といえば超音波霧化分離技術。液体に超音波を照射し、霧(ナノミスト)を発生させ、その霧を回収することで従来の蒸留法に比べて低温度・低エネルギーかつ高効率に各種物質を分離・濃縮・精製することが可能な唯一無二の技術です。

 

「霧化分離の技術は元々お酒の精製方法の一つとして誕生した技術なんです。当時、酒造メーカーに勤めていたのですが、突然、酒税法の改定でアルコール22%以上のお酒は製造NGに。アルコール25%の清酒を製造する際に使用していた霧化分離の技術は瞬く間に日の目を浴びなくなりました。何とかしてこの技術を他用途に転用できないかと思考を巡らせていた時に前述の公募のことを知り、一念発起した感じです」。

 

 

液体を熱し、すべての物質をバラバラに気化させた成分を集めて冷やすことで高濃度の液体を精製する一般的な蒸留方法と違い、霧化分離は物質の種類ごとに分離・気化させるため、低コストでありながら、濃縮度合いの調整なども行えます。

 

「もう一つ、蒸留との大きな違いが熱源です。蒸留装置や蒸発装置には化石燃料が用いられ、燃やした際の熱を利用しますが、霧化分離の熱源は電気です。電気は燃やす過程がないので煙も出ません。その証拠に弊社の工場には煙を排出する煙突のようなものがないでしょう?これって画期的で、煙が出ないということはCO2の排出も少ないということ。事実、超音波霧化分離装置は蒸留装置と比較して、使用エネルギーを約3~7割、CO2排出量を約4~8割削減できるといわれています」。

 

 

何かと地球温暖化が懸念される昨今において、その筆頭となるCO2の排出量を抑えつつ、作動中の装置の表面温度も手で触れられるほどの低温度を実現。病院をはじめとする高温度稼働が好ましくない場所にも設置できる超音波霧化分離装置。お客さまによって使用用途が違うのも面白いと松浦さんは笑みをこぼしますが、それだけ多業種に応用ができる技術だということ。

 

 

「例えば自動車を作る上での工業排水から廃棄部分以外の水分だけを取り除いたり、温泉水を濃縮してビューティーサロンで肌に噴射したり、食品からエキスだけを抽出して最終的に健康食品の錠菓に姿を変えたり。実際に導入いただいているお客さまに使用用途を聞くと、そんな転用の仕方があったかと勉強になることがほとんど。同時にこの技術のさらなる可能性を創造してしまいます。あと15年もすれば火力や原子力に変わる新たな発電方法が確立され本格運用される動きが出てきています。その発電に弊社の技術が適任なのではと考えています。特許を取得している弊社の霧化分離技術をより周知しながら、普及拡大に注力していきたいですね」。

 

課題

人材不足

企業情報

企業名 ナノミストテクノロ ジーズ株式会社
業種 製造業
事業内容 超音波霧化分離シス テムを用いた液体・排ガス等処理装置 の設計など
住所 撫養町木津字西小沖635-1
代表者名 松浦 一雄
設立 2002 年
HP https://nanomisttechnologies.com
電話番号 088-684-3399