国内唯一のオーダーサーフトランクス。『NALUTO TRUNKS』

 

国の特別天然記念物であるコウノトリの住処や240 年以上の歴史を誇る徳島の伝統工芸品「大谷焼」の窯元などが密集する大麻町。広大な田園風景が続く道を一本入ったところにサーフトランクスをはじめ、様々な縫製品を手掛けている『山口株式会社』はあります。
アメリカ・南カリフォルニアをイメージしたという工場は吹き抜けの天井に、太陽の光がたっぷり降り注ぎます。入り口のドアを開けると、サンディエゴを彷彿とさせるヤシの木がお出迎え。

「会社名は『山口株式会社』ですが、『鳴門トランクス』と言うとわかってもらえます。ブランド名だけが一人歩きしているような感じですね（笑）」。

代表を務める山口輝陽志さん（49）はサーフボード片手に海へ繰り出す、大が付くほどのサーフィン好き。当初は趣味で始めたトランクス作り。ある時、ブログに載せたサーフトランクスがサーフアートの巨匠・豊田弘治氏の目に留まり、山口さんに作製を依頼したところ、その確かな縫製技術と天性のセンスに「絶対売れる」と惚れ込んだのだとか。以降、ハワイ語で波（うねり）を意味する「NALU」を取り入れた『 NALUTO TRUNKS（鳴門トランクス）』としてブランドを立ち上げました。

　

「ブランドを立ち上げた時はアメリカに2 社あったくらいで、国内にサーフトランクスの工場はなかったですね。サーフトランクスって特殊で。競技用としての用途もさることながら、ファッション性も問われます。僕は1950～70 年代のアメリカのサーフィンカルチャーが好きで、その年代のデザインを参考に、弊社の縫製技術を織り交ぜたウチでしか買えない商品作りを心がけています」。

　

名刺代わりとも言えるサーフトランクスは完成までに8 台以上のミシンを使い分けているといいます。数種類のステッチ（縫い目）の技法を採用することで皮膚に擦れないよう工夫されており、伸縮性のある水着を長年縫製してきたからこそ成し得る“技術の賜物” だと山口さんは胸を張ります。生地には一般的にナイロンを使用することの多いサーフトランクスですが、一着を長く使ってもらえるようにとの思いからコットンを使用、修理も行っています。

「確かにナイロン生地は乾くのが早いですが、劣化も早い。一方、コットンは乾くのに多少時間はかかりますが丈夫です。ウチでは10 年履き続けられるような商品を提供しています。加えて、ジーンズや革財布のように使うほどに味わいが出てきますので、手に取っていただいた方の色に染まり世界に一つの商品になると思います。エコやSDGs と言われる世の中ですが、僕は何度も買い換えるのではなく、一つのモノを長く使うことが一番のエコだと思っています。履くたびに味が出て、環境にも良いって最高じゃないですか（笑）？」。

　

衣服の素材で高機能素材などが台頭し、性能も日を追うごとに改良されている昨今、新たな試みとして、石川県の企業と共同開発した生地「POLY MAX」を使ったコーチジャケットやショーツを作りました。

「どんどん新しいことに挑戦していかないと。生き残っていけませんから。ただこれまで続けてきたことも大切に残していかないといけません。だからこそ定番商品も作り続けます。その中で少しづつアップグレードはしていきますけれど」。

　

これまで培ってきた高い縫製技術でこれまでの定番は残しつつ、常に新しいことを追い求める山口さんにこれからの展望を聞くと、「海外へのNALUTO ブランドの発信」とキッパリ。

「アメリカには各ビーチにサーフクラブがあるんですよ。その各クラブでジャケットとサーフトランクスのユニフォームがあって。そのユニフォームのデザインをやってみたいですね。遠く離れた異国の地で“NALUTO” の文字を背に刻んだサーファーが海に繰り出している。考えただけでワクワクしますよね。そのためにも日々の縫製に責任を持ち、自信を持ってお客様にオススメできる商品を作って発信していけたらと思います。一人でも多くの方に手に取っていただいて、こだわりを感じてもらえたら嬉しいですね」。