紙一枚もとおさない0.01mm の木工世界。 創業115 年の匠の業
小林木工所 代表 / 小林昭夫さん
「小さい頃から祖父や父の仕事をずっと間近で見てきましたから、私もいずれは…と思っていました。家業を継ぐのは必然でしたね」。
祖父や先代の父も含めて数えること四代目。今年で創業115 年、オーダー家具の木製建具やサッシ施工、襖・表装の張り替えなど木工工事全般を行う『小林木工所』代表の小林昭夫さん(66)さんは当時を振り返り目を細めます。
小林さんは高校卒業後、家業に従事。祖父や父のもとで木工事(もくこうじ)の技術を磨き、35 歳の時に父より代を継承。それに合わせて現在の拠点に作業場と倉庫を新設、気持ちを新たに四代目として一歩を踏み出し始めました。
「ありがたいことに、一度の施工をきっかけにその後も長いお付き合いをさせていただいているお客さまが大勢いらっしゃいます。弊社はフルオーダーの商品を提供しているので、お客さまの想いや些細なこだわりも尊重し、出来るだけ取り入れるようにしています」。
決してカタログの既製品では叶わないオンリーワンの家具・建具を提供し続ける小林木工所。
施工時に喜んでもらうのは当然、大切なのはそこからと小林さんは話します。
「せっかく、お客さまにリクエスト通りの商品をお届けできたのに、すぐ不備が出てしまっては意味がありません。もちろん時間の経過とともに傷むことはありますが、弊社では修理などのアフターフォローを大切にしています」。
儲けを考えると大量生産・大量消費が基本。傷んできたら早々に新しいものに買い換えるのが一般的な現代で、一つの商品を長く使い続けてもらうことを大切にしているのは、確かな技術があってこそ。“サッシ施工、家具製作、表装・襖” それぞれで一級技能士の資格を持つ小林さんならではの匠の精神です。
「特にオーダー品に関しては、お客さま自身の思い描くイメージがあります。しかし、なかなか言葉で表現するのが難しいんですよね。その見えないイメージをより可視化できるようにどんな素材のものがあって留める金具はこれだけ種類がありますよ、とこちらから提案をさせていただいています。また、施工前・中・後それぞれ写真を撮って見せるようにしています。写真で過程を見ることで、よりお客さまが完成後のイメージを膨らませることができるかなと」。
同社の技術力を象徴するのが2015 年に開業した醸造所やレストラン、宿泊施設を備えた『RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store』の一際目を引く大小異なる窓ガラスで覆い尽くされた外壁です。
「すっかり埃を被っていた窓ガラスや障子の枠、約100 枚をテトリスのように上手くはめ込むのに苦労しました。加えて元は室内建具だったものばかり。ガラスの厚みも2mm と、外壁にするには心もとないことから、雨風にも負けない6mm のガラスに全て差し替えました。そのために枠の組子1 本まで全て分解したり、6mm のガラスがはまるように溝も2mm から6mmに掘り直したりと高い集中力を長時間保ちながらの作業は何度心が折れそうになったか…(笑)。それでも完成した時の達成感や今でも多くの方が写真を撮っている姿を見聞きすると喜びもひとしおですね」。
四代目として同社を牽引して30 年余り。五代目は小林さんの息子さんが引き継ぎますが、まだまだ身体が動く限りは生涯現役、と意気込む小林さん。これからも一つひとつを丁寧に且つお客さまのことを第一に考えた仕事をしていきたいと話します。
「今後も紙一枚通さない、0.01 ミリの隙間にこだわった仕事をしていきます。どれだけお客さまに寄り添いながら一生ものの商品を提供できるかが弊社の命綱。私が祖父や父の背中を見て学んだように、息子にも胸を張れるように頑張っていきたいですね。そしてお客さまに手作り品の良さを知っていただけたらなと思いますね」。
企業情報
企業名 | 小林木工所 |
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業種 | 製造業(木材、木製品) |
事業内容 | 室内建具、取り付け家具、障子、襖などの貼り替え、木工工事、建具リフォーム |
住所 | 大麻町津慈8-8 |
代表者名 | 小林 昭夫 |
設立 | 1908 年 |
電話番号 | 088-689-0687 |
kobayashi.akio@navy.plala.or.jp |